君と会うまでの記憶なら





俺のものじゃなくなってもいいとか





そんなことが思えるくらい





君を好きになりました。



























『それが愛でした。』
























は天気に左右されやすい。





「長太郎ー。くもりだよ・・・晴れるかなぁ」


「午後から晴れるよ。天気予報で言ってたし。」


「本当?」


「本当。」





授業が自習になったため



俺とは図書館へやって来ていた。



もちろん俺ととは同じクラス。



他のクラスメイトも何人か図書館へ来ていたけど



俺とは広い図書館で周りに誰もいない机の一角に、向かい合って座った。








は天気に左右されやすい。



くもりはを落ち込ませ、雨はを憂鬱にさせ



晴れだけがを元気にさせる。






「でもなー、最近気象庁嘘つきだしなー。」


「雨季だからね。天気はわかりにくいよ」


「ぶー」






窓の外を眺めながらの落ち込みは深くなっていく。






「・・・雨は嫌だな。」


は本当に晴れが好きだよね。」


「長太郎は違うの?」


「晴れが・・・好きだけど」


「でしょー?一緒一緒。」






晴れはを元気にさせるから。



窓の外は確かにくもりだ。



晴れるとは言っても雲は厚いみたいだし



空気は湿っぽい。






「・・・・・・降るよね、これは。」


「かも知れないね。」






雨はを憂鬱にさせるのだろう。



の憂鬱はすごい



近くにいると俺も憂鬱になってくるほど元気がなくなる



それでも元気のないはほっとけないから



俺は雨が降ったらいつも以上にの近くにいようとする






「・・・・長太郎ー」


「どうしたの?」


「手。」


「手?」






俺の向かいに座るが机にうつぶせて



俺のほうに両腕を思いっきり伸ばしてきた。



俺はの左手に自分の右手で少し触れる。







「・・・・・長太郎ー」






が俺の右手を左手で握った。










「いいや。今日は。」


「え?」









うつぶせたままだったが少しだけ顔を上げる。














「長太郎が好きなのがあたしと同じ晴れだってわかったから。今日は雨が降っても平気!」


「・・・・・」


「・・・・やっぱり・・・ちょっと落ち込む、けど」















が再び顔を伏せる。



折角、笑って言ってくれたのに






(晴れればいいのに)






が元気になればいいのに。



憂鬱な顔なんかさせたくないのに



顔を、



上げて。














「んー?」










伸ばした腕、の左手は俺の右手と繋がったまま














































































「愛してる」


「(!!)へ?!」









































































































君と会うまでの記憶なら



俺のものじゃなくなってもいいとか



そんなことが思えるくらい



君を好きになりました。






「顔、上げてくれた。」


「・・・・・ちょっ長太郎・・・」


「晴れるといいね」


「え、うっうん・・・・」






いきなりの愛してるに戸惑う



勢い良く起き上がったの左手はまだ俺が握ってる。



の体温が少し上がった気がしてうれしかった。



に顔をあげてほしくて、言ったけど



愛してるなんて、初めて言ったから。






(あがったのは俺のほうかもな)






湿った空気



曇る空。



君に会うまでの奇跡なら



なかったことにしてかまわない



例えば空が晴れて



君が元気になるような



そんな奇跡が掴めたらいいのに



そんなことが思えるほど、


















































君を好きになりました。

















































「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダメだ。」


「どっどうしたの?長太郎」






今度は俺が突然崩れたように机にうつぶせる。



慣れないことは言うもんじゃない。



顔が熱くて仕方がない。






(・・・・・もう言えなそう)






に顔をあげてほしくて言った。



俺の中にあった‘愛してる’って言葉は使われて



一度口からでたので帰ってこない。



想いはまだ確かに、あるけれど。






「・・・・・・長太郎」






君と会うまでの記憶なら



俺のものじゃなくなってもいいとか



そんなことが思えるくらい







?」





















































君を好きになりました。




















































































が机に身を乗り出して、俺にキスをした。









































「・・・・・今日は雨が降っても平気。」


「っ・・・・・」






君の左手と俺の右手は繋がったまま。



くもりはを落ち込ませるのに



空はくもりなのに、が顔を上げて照れて笑う。





「・・・・・帰ってきた」


「何が?」


「いやっ何でもないよ」


「ちょっと長太郎っ・・・」


「あっほら!!」





俺の指差した窓の外。





「すごいね、気象庁!」


「そこなの、?」





例えば空が晴れて



君が元気になるような



そんな奇跡が。



・・・・・・言ったから、掴めた?






「晴れてきたね、長太郎!!」






光が雲の隙間から差し込み始め、広がっていく。



図書館の中。



元気になった






「そう言えば、何が帰ってきたの?」


「・・・・・・なんでもないって」


「嘘だ!」






キーンコーン






「ほら、チャイムが・・・・」


「流されたー」






終業のチャイム。



今日はこの後晴れ間が広がる。



が元気になって



俺は少しだけ思う。



晴れに負けないように曇りの日も雨の日も



俺がをずっと、笑っていさせてあげられればいいのに。






















































俺の中にあった‘愛してる’って言葉






一度口からでたのに俺の口に






のキスが帰してくれた。





























































































































愛してるって言えるほど、





俺は、君が好きになりました。














































End.