「・・・・永遠の恋なんてありませんよね、ブン太。」
「え?」
「永遠の恋。」
を家に送る帰り道。
空では太陽が沈みかかっていた。
『好きでいてやる』
映画を見に行こう。
それは久しぶりのデートだった。
今話題になってる洋画で
が見たいと言い出した。
俺はと出かけられるならどこでもよかったから
なら今度の日曜日にと約束したんだ。
そして今日は日曜日。
今はその映画の帰り道。
「映画の話?」
「うん。結局2人は離れ離れ。」
「でもあれはあれでハッピーエンド。だろ?」
「そう、だけど。」
繋ぐの手に少しだけ力がこもる。
「でも・・・でもあれじゃあまりに2人がかわいそう」
沈む夕日。
の顔が陰る。
握る手の温度が少しだけ上がる。
「・・・・・・・・」
「永遠の恋、ね。」
映画では、愛し合う2人がいた。
でも2人はあまりに身分が違った。
貴族の娘。
貧民の息子。
ある事件をきっかけに2人の仲が周囲に知れわたり、
そして男のほうが殺されかける。
男を救う方法はただ一つ。
女が貴族の別の男と結婚し、その貧民の男と縁を切ること。
逃げることも考えるが、
男を思えば女には一つの手段しかなかった。
永遠の恋を誓っても、永遠に一緒にいることはできない、
そんな悲恋の話。
「・・・?」
「・・・・・・・」
「おもしろくなかった?」
「・・・・あたしが見たいって言ったのにね。暗くなっちゃってごめんね、ブン太。」
が俺を見て寂しそうに笑った。
もうすぐの家に着こうとしていたときだった。
(見なければよかった)
久しぶりのデート。
寂しい顔ではなく、
今日一日の笑顔を見ていられると思ったのに。
‘永遠の恋’
の横顔を見る。
お前、何考えてんの?
沈む夕日。
の顔が陰る。
「・・・・終わりとか、考えてんじゃねえだろい?」
「え?」
「俺との終わりとか、そんなの考えてるわけじゃねえよな。」
が顔を上げる。
俺は夕日に染まるの顔に泣きそうな色を見て
ああ、やっぱりそんなことを考えてたのかと。
の手を強く握りなおした。
にそんな悲しい顔をさせないために
でてきた言葉はあまりに気障で。
「・・・永遠の恋ならあるぜ。」
「ブン太・・・・・・」
「俺たちは永遠じゃないけど・・・・」
気障だけど
本心。
映画の中で愛し合う2人は誓った。
会えなくなる前の日に
最後に一緒に見た夕日に。
たとえ一緒に生涯を終えることができなくても
永遠にお互いを想うと。
永遠に相手に恋をすると。
「明日もあさっても好きでいてやる」
「っ・・・・ブン太・・・」
歩みをとめてを俺に引き寄せて
抱きしめて
夕日の沈んだ空の暗がりに隠れて。
あの映画の真似じゃないけど
「死ぬまで好きでいてやる」
だから
永遠の恋なんてないだとかそんなことは考えなくていいから
ずっと俺のことを好きでいればそれでいい。
「あれ?今俺重いこと言った?・・・まっ勘弁しろぃ」
「ブン太・・・・」
「今日だってと一緒にいられれば俺はそれで良かったんだぜぃ?」
「・・・うん。・・・・・・ありがとう、ブン太。」
あたりは暗くて、の表情はわかりにくかったけど
今日一番の笑顔で俺を見ていると思った。
そう思った。
永遠の恋なんて
「今度はブン太の行きたい場所に行こうね!」
「んー・・・俺の部屋かの部屋な」
「・・・・・・・・・」
「そんな顔すんなよ!別にいいだろぃ!!」
永遠の、恋なんて
あると思う。
End.