よく笑うんだ。
優しくも明るくも
よく笑うんだ。
苦くも思い切り
無理やりにでも
君は、よく笑うんだ。
『好きになってもいい?』
「あーバカだなぁ千石。」
「ひどいなあ。ただでさえ呼び出されて落ち込んでるんだから」
「えーでもさあ。ねえ、!千石の成績表見てみなよ!」
クラスで騒ぐメンツっていつも決まってる。
口火を切る人がいて、
その周囲に集まってくる奴がいて、
バカ笑い。
騒いで。
そんな中で彼女は男からも女からも好かれる人で。
「今までラッキーでどうにかなってたほうがおかしいのよ、キヨ」
「ひどいなあ、まで。これでもいつもよりがんばったんだよ?」
「がんばってる人は先生に呼び出されたりしませんー。」
「千石言われてやんの」
「・・・・へこんだ」
「あははっ本気でへこんでる!」
俺は今回定期テストで悪すぎた成績表を握り締めて、
その場にしゃがみ込んだ。
周囲のいつものメンツが俺をからかってる。
そんな声に囲まれて俺はふとしゃがんだまま上を見上げた。
「(・・・・・・・え?)」
は頭もいいし、人をまとめる力もあって
優しくて明るくて
いつも笑っている、
だからみんなから好かれてて、誰とでも仲が良くて
いつもこのメンツの中心にいて。
でも、
「・・・・?」
「ん?何キヨ。勉強なら教えないわよ」
「そうじゃなくてね!」
「あっ。あたし生徒会のほう行くね」
「えっ。今日もなんかあるの?」
「文化祭近いからね」
「またね、!」
が振り返り笑顔で俺たちに手を振って
教室のドアを抜けて見えなくなった。
よく笑うんだ。
優しくも明るくも
よく笑うんだ。
苦くも思い切り
誰からも好かれてて、
だけど、そんな君が見せた一瞬の表情。
(どうして、あんな・・・・・)
笑う周囲の声の中
君は少しだけ
その目に涙を浮かべてた。
「・・・・?」
「あれ?キヨ」
の後を追って俺は生徒会室にやってきた。
とても気になったんだ。
いつも笑顔の君が
泣いていたのはどうして?
「あれ?他の生徒会の人は?」
「あたし係りだもの。これを片付けるのはあたしの仕事」
「・・・それ全部?」
「全部。」
の座る席の前に置かれた山積みの書類。
これを1人で?
「俺手伝える?」
「細部チャックで矛盾があったら書き込む。できる?」
「・・・・・・・・」
「ぷっ・・・・」
「ちょっと?」
「いや、だって。あははっキヨはおもしろいね。」
が笑った。
いつもどおりの明るい笑顔。
俺はの隣の席に座って、
を見つめた。
手伝える?と聞いた俺はからの手伝う内容を聞いて冷や汗。
はそれがおかしくて笑ったみたい。
「、笑いすぎだよ」
「あははっ・・・・ごめんごめん・・・・」
「・・・。」
「んー?」
俺は真面目な顔をした。
「どうしたの?キヨ」
「無理してる?」
「え?」
いつも笑ってたよね。
みんなの中心で。
俺はその笑顔が好きで。
いつの間にか君に惹かれていた。
「無理して、笑ってる?」
「・・・・・・キヨ・・・・」
「さっき泣きそうになってたでしょう?」
よく笑うんだ。
優しくも明るくも
よく笑うんだ。
苦くも思い切り
でもそれって
俺たちが無理をさせてたの?
よく、笑うんだ。
「・・・」
「え?・・・あれ?参ったな・・・・あははっ・・・・」
の頬を涙が伝った。
それなのには笑おうとしていた。
それが、
とても痛くて。
いたたまれなくて。
「・・・笑わないで」
「っ・・キヨ・・・・・」
「笑わなくていいから・・・・」
だから、泣いて。
君の気が済むまで。
いつも笑っていた君が肩震わせて
声を殺して泣いていた。
「・・・・。」
「・・っ・・・・・・」
君の頭に手をのせてぽんぽんと叩いた。
理由なんてない気がした。
「あたしっ・・・・寂しくて・・・・」
ただ寂しかったと。
どんなにたくさんの笑顔に囲まれていても
寂しくて。
孤独に、怯えて。
「・・・・・・・・・・・・ねえ、」
自分の顔を両手で覆っていたの手を
俺は手に取った。
瞳にいっぱい涙をためて
泣いていた。
は俺と目を合わせるとすぐにそらしてうつむいた。
「ー?」
「やだっ・・・・見ないでキヨ・・・・」
「・・・ねえ、。」
俺はの顔を覗き込んだ。
「好きになってもいい?」
ずっと前から惹かれていた。
笑う君。
寂しいというのなら、
君の悲しみに気付いたのが俺だけだったなら
「キヨっ・・・・」
「ね?」
「っ・・・・・・・・」
が赤くなる。
俺はまだの顔に残る涙をぬぐうと
その涙の痕にキスをした。
「清純っ・・・・」
「もう、好きなんだけどね。」
寂しいというのなら、
君の悲しみに気付いたのが俺だけだったなら
絶対に側にいようと
そう思ったんだよ。
「俺の前では無理なんかしないで、。」
笑う君も、泣く君も。
俺の好きな君だから。
End.