あなたとの距離





いつだって





隣より一歩、斜め後ろ

















『縮尺距離感』














。今度の日曜会おうって言ってたじゃろ?」


「うん。そう言えば。」


「急に部活になったんじゃ。会えなくなった。」






同じクラスのあなたとの距離は



あたしがあなたの斜め後ろの席



かすかに見える横顔が振り向いてくれるまであたしは待つ。



今もそう。



仁王が振り向いてくれて、それで話ができる。






「そっか。・・・しょうがないね。部活だもんね」


「ごめんな。また埋め合わせは・・・っていつできるかわからんが。」


「気にしなくていいよ。別に平気だし。仁王が会いたいって言うなら別ですけど?」


「・・・・ごめん」


「いいって、仁王。」






別に



別にいつものことだから。



仁王と付き合ってたって



どんなに前からの約束だって



あの忙しいテニス部の仁王。



会えなくなることはいつも同じ、慣れたもの。















































あなたとの距離



いつだって



隣より一歩、斜め後ろ



それは帰り道でも変わらない。






。帰ろ。」


「うん。ねぇ、仁王。今度の日曜がダメなら来月は?今月はもう休みないでしょう?」






少しだけ見える仁王の横顔



揺れる銀髪のしっぽ



あたしは仁王より足がだいぶ遅いから



いつだって仁王は



教室に座る席と同じ距離のまま。






「んー・・・来月もどこも開いとらん。」


「そう・・・なんだ」


。明日からもだいぶ練習が終わるのが遅くなるんじゃ。もし大変だったら、部活終わるの待ってなくてよかよ?」


「・・・・・」






見えるのは



かすかな横顔と銀髪のしっぽで。



・・・別に。



別にいつものことだけど。






(なんて、タイミングの悪い)






「・・・日曜も会えないし、一緒にも帰れなくなるの?」


「すまん、。少しの間だけじゃが、そういうこと」


「・・・そっか。しょうがないね。」






隣より一歩、斜め後ろ。



あたしの足が遅いから。



仁王は忙しいテニス部だし



仕方がない。



仕方がない。






?」


「大丈夫だよね!あたしは仁王の彼女だし、クラスで毎日会えるし!」






銀髪が揺れて、仁王があたしに振り向いた。



あたしは、仁王に見とれて足をとめざるを得なくて。



仁王は、一歩斜め後ろへと足を進めてきた。






「・・・






あたしの右手を仁王が向き合いながらつなぐ。






「・・・仁王?」


「俺、が俺のもんになったとき決めたんじゃ」


「・・・何を?」






仁王の銀髪が夕日に染まる空からの光に透ける。



あたしと目を合わせる仁王はかっこよくて



今のあたし達には隣より一歩斜め後ろの距離なんてあるはずもなかった。






のこと大切にしよって」


「!!」


「大切にしたいって。本当に。・・・・・・・・本当に。」






















































‘心から。’




























































目が、そらせない。



もう触れられているんじゃないかとさえ思ってしまう、仁王との顔の距離。






「じゃけえ、もっと寂しがって」


「(!)におっ・・・」


「俺が寂しくなる。」






・ ・・・わかって、いるくせに。



ねえ、仁王。



寂しいと思う人はね仁王みたいに余裕な笑みは浮かべないんだよ。



きっと今のあたしのような表情になるはずだよ。






「・・・・・寂しくない。いつものことでしょ。」


「・・・?」


「・・・・・・・・・・・」


「寂しくなか?」






仁王があたしを見つめる。



目がそらせない。



あたしはいつだってこの人には、








勝てない。








「仁王はっ・・・・」


「ん?」


「仁王はわかってるでしょ?」


「何を?」






余裕の笑み。



全部、知ってるくせに。



本当は



会えなくたって、


































































































会いたい。



























































































































「・・・・ちょお、待って。泣かすつもりはなかよ?」


「あたしだって泣くつもりはないです!」


「でも。ほら。」






仁王が空いているほうの手で



あたしの頬をなでて目元に口付けた。






「(!)」


「ほら、涙目。」


「仁王・・・・・」


「クラスで毎日会えても、は俺の彼女じゃろ?」






だから、寂しがって。



あなたの隣一歩斜め後ろのはがゆさ。



テニス部に奪われる会えない時間。



会えなくたって、



会いたいから。










「・・・仁王。あたし、仁王より歩くの遅いから。」


「うん」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だから、隣を歩いてくれませんか?」









あたしでは歩幅をあわすことは出来ないから。



せめて、手を繋いでいられるように。



隣より一歩、斜め後ろ。



仁王のかすかな横顔ばかりは嫌だから。






「・・・やっと言った。」


「え?」


「やっとの隣を歩ける」


「・・・・・仁王?」


「言ったじゃろ?大切にしたろって思ったって。じゃからもっと寂しがってって。」


「(!!)」






あたしはいつだってこの人には、



勝てない。






「帰ろ、。」


「・・・・・・・・知らない、仁王なんて。」


「ん?」






繋がった手



あなたが隣を歩くのは、帰り道。



隣より一歩、斜め後ろではなく。







「会えない時間ができたぶん。会える時間はこうやって、できるだけ側にいるとよ。」


「・・・・教室でも?」


「くくっ・・・。がお望みなら。」






会えなくたって、






「俺は寂しいとよ、。本当はずっと側にいたいきに。」


「・・・・・・・あたしだってっ・・・・・寂しいです。」






会いたいから。



だから、寂しがっていいの?









































































































































































‘もっと寂しがって’







































































































‘俺が寂しくなる。’































End.