「けっ景吾!これどうするの?」



「忍足、向日。やる。」



「「え。」」








部室に山程のチョコのはいった紙袋と箱。






…全部景吾宛て。




















『たった一つ』

















「よかったの?忍足と岳人にまかせて。二人だってすごい量のチョコもらってるのに」



「部室にあいつらしかいなかったんだから、仕方ねえだろ」



「問題はそこじゃないよ、景吾」





最後の授業はでなかった。




学校にいたら放課後になった瞬間に女の子たちによって景吾が帰れなくなるから。





黒塗りの景吾の家の車に乗って二人で向かうあなたの家。




着けばいつも通りに景吾の部屋にはいった。





「・・・・・」



「どうした、。」






さっきから胸の奥がズキズキする






「…景吾」






なんでもないなんて言わない






「チョコもらって」






なんでもわかるその目の前では嘘なんて無意味だ。




胸の奥がズキズキする。











鞄からラッピングされたチョコを取り出す。




どんな風に言ってくれるかとか




どんな表情してくれるのかとか




景吾のことばかり考えて作ったチョコ。










景吾があたしの手からチョコを受け取った。









「…泣くところじゃねえだろ、。」



「え…あれ…?」






顔に手を触れれば




頬に伝うほどに涙。











「っ…」











胸の奥がズキズキする。
























「…こっ怖い!…」



「・・・・」



「だって景吾、あんなにたくさんチョコもらって」



「もらってねぇよ。俺がもらったのは一つだけだ。」



「っ……埋もれるかと思った…」



「埋もれる?一体何に?」








たくさんのあなたへの気持ちの形




あなたも見たでしょう?








のもの以外は全部置いてきた。」



「…でも」



「埋もれるはずがねえ」











景吾があたしがあげたチョコのラッピングをほどき始める。




中から取り出した一口大のチョコ一粒




景吾が自分の口へ運ぶ。




















「っ…ん…」



















景吾があたしの腕を引き寄せた。




暖かい唇。












「け…ご…」










甘い甘い口内。




あたしの作ったチョコの味。




唇が離れて顔をあげれば




いじわるに笑う景吾。












「うまくできたじゃねぇか」



「けっ景吾!!…」



「一緒に食おうぜ」














繰り返す口付け




その度に口の中に広がる甘さ

















「まだ泣いてんのかよ」



「だって…」





























どうして泣いてるのかって?




君のせいだよ。

























のしかいらねぇよ」





最後のチョコの口付けの後




景吾が言った。




胸の奥のズキズキは




チョコの甘さと景吾に緩和されて。
























ねえ、なんでもわかるその目なら




あたしのたった一つの望みすらわかるでしょう




どうかあたしだけを




見続けて。










































あなたが私に口付ける一瞬が




永遠になればよかったのに。


































end.