「ー!!」
「きゃっ・・・」
あたしはかなり足腰が強くなったと思う。
いや、そっちの方面の話じゃなくて
出会えば毎回抱き付かれるから
倒れないように耐えていたせい。
『結ばれた赤い糸』
「芥川くん・・・」
「、今日は初めて会うね!!」
「あ、・・・うん。」
大抵の移動教室の帰り、
自分のクラスに戻る為に芥川くんの教室の前をとおる。
「あの、芥川くん」
「ジローでいいよ」
「・・・ジローくん、そろそろ離してほしいなぁって・・・」
「えー嫌だCー。俺のこと好きだもん。もう少しこうしてたーい」
彼の教室の前を通るたびに
教室から飛び出してきていきなり抱き付いてくる芥川くん。
「あのでも、ね」
ここは廊下。
芥川くんは毎回のように公然であたしに好きだと言ってくる。
「俺とは赤い糸で結ばれてるから、ずっとひっついてていいんだよ!」
「・・・赤い糸?」
「知らない?忍足が言ってたよー。運命で結ばれてる男女は赤い糸でつながってるんだって!」
・・・忍足くん、何を芥川君に吹き込んだの?
知ってるよ、赤い糸。
でも・・・
「そんなのあってもあたしが切っちゃうよ」
「うわー!、俺へこむよ?!」
だって、どうして芥川くんとあたしが赤い糸でつながっているなんて言えるの?
「いいよ。赤い糸、が切っちゃても俺がまた結ぶもん。」
どうして?
いつも公然で
どうしてそんなに堂々と。
好きだとか運命の赤い糸だとか言えるの?
「芥川くん。」
「ジローでいいよ」
「芥川くんはどうして・・・」
「ジロー。」
抱き付かれたままのあたし。
ここは廊下。
公然で。
「ジローくんはどうしてあたしと赤い糸でつながってるって言えるの?」
どうしてそんなに堂々と
好きだって言ってくれるの?
「だって俺はのこと好きになったんだもん。」
これを運命って言わないでなんて言うの?
どうしてそんなに堂々と。
あたしは言えないよ
わざと移動教室の帰りにジローくんの教室の前を通るようにしてるとか。
いつも寝ているジローくんが
あたしに抱き付きに教室を飛び出してきてくれるうれしさとか。
ここは廊下。
公然で。
堂々となんか言えないよ。
「・・・やっぱり。」
「ん?何?。」
「やっぱり切っちゃうから、赤い糸。」
知らない誰かに結ばれた赤い糸。
もしもあるなら
「ジローくんが結び直してくれるなら、あたしはジローくんの結んでくれた赤い糸でつながってたいもん」
だから一度切るよ
見えない赤い糸。
あたしを好きになってくれたことが運命だって言ってくれるなら
あたしがジローくんを好きになったことも運命。
「・・・・・ー!!!!!」
ジローくんがあたしを抱き締める。
「ジローくん、苦しいよ」
ここは廊下。
公然で。
あなたみたいに堂々とはいかないけど
今のがいつも好きだと言ってくれたジローくんへの返事。
「結ぶよ、赤い糸!ほどいちゃダメだよ、。」
「・・・ほどかないよ」
ほどけないよ、あたしには。
ほどきたくないもん。
ここは廊下。
公然で。
あなたが結んだ赤い糸。
きっとほどけはしない。
あたしを好きになってくれたことが、運命だと言ってくれたから。
end.