会えなくなると知っていた。
それでも、会いたかった。
『泡沫人』
絡めた指は細く
抱き締めた体は細く
会えなくなると知っていた。
「。大丈夫?」
「うん!早く行こうよ、雅治」
それでも、会いたかった。
一瞬でも一緒にいたくて
あせっていた毎日
「?・・・つらそうじゃ。休も?」
「えっ・・・嫌だよ!っ・・・けほっけほっ」
「(!!)!」
会えなくなると知っていた
俺も、も。
「折角雅治と遊びに来れたのに・・・」
あせっていた毎日
一瞬でも一緒にいたかった
「休むとよ、。俺もはしゃぎすぎじゃ。一緒に休憩。な?」
「・・・ごめんね。」
「謝ることなか。と遊園地に来れて俺はありがとうじゃ。」
「・・・・うん、あたしも。ありがとう雅治。」
会えなくなると知っていた。
「仁王くん」
「・・・柳生か。何?」
「無理をしているように見えます」
「・・・気のせいじゃ」
学校は静かだった
どこにいても
どんな時も
がいない学校は静かだった
「・・・泣けば悲しみは減ると聞きますよ」
「俺に泣けって?」
「そうではなくて・・・ただあまりに仁王君が悲しそうなので・・・」
涙は、でなかった。
「・・・(。)」
声は音にならない。
俺はの名前が呼べなくなった。
呼べなくなった。
は泡のように消えていなくなって。
「雅治」
「、もう大丈夫?」
「うん。結局あんまり遊べなかったね」
「観覧車乗れたとよ」
「・・・うん。」
会えなくなると知っていた。
あせっていた。
一瞬でも一緒にいたかった。
「ありがとう、雅治。」
「観覧車。楽しかったの。」
「うん!!」
今は瞼を閉じればに会える
泡のように消えていなくなった
「()」
涙は、でなかった。
王子の為に自分が泡になって消えるおとぎ話
確か、
人魚姫。
人魚姫がいなくなって、あの後王子は、のうのうと幸せに暮らしたんだろうか。
俺は海へ向かっていた。
人魚姫の泡のように消えただから
に会えるなら海だと思った。
「(。)」
遊園地がとでかけた最後の場所
「バイバイしたくないな・・・」
「・・・明日も会えるじゃろ?学校で。」
「・・・そうかもしれないけど、嫌なの。」
あの時はきっと知っていた。
会えなくなるのは
明日なんだと。
「バイバイか・・・」
「したくないならしなくていいとよ」
「え?」
絡めた指は細かった
抱き寄せた体は細かった
会えなくなると知っていた。
「俺もバイバイは嫌じゃ」
それでも、会いたかった。
今は瞼を閉じなければに会えない
「()」
泣けば悲しみは減ると言われたが
俺の心は泡になったに持ち去られたまま、空っぽで
涙なんかでてはくれなかった。
残った心は唯一の
俺の中の絶対。
単純明解厄介なこの想い
「()」
人魚姫がいなくなった後王子はきっと幸せになんか暮らせなかった。
人魚姫はと同じように泡となって王子の心をさらっていったんだ。
海は青かった。
「俺は幸せだったとよ。といる時は世界で一番幸せだったとよ。は?俺はを幸せにしてあげれた?」
言葉にすれば泡のよう届かず消える
はかない、泡だった。
はあの日おとぎ話の人魚のように
水の中
泡になって消えた泡沫人。
さらってくれるなら、波。
届けて、この声を
震えてかっこいいものじゃないが。
伝えて、好きだと。
震えてうまくは言えないから。
「好いとうよ。・・・好いとう(。)」
涙は、でなかった。
それでもこの声が震えるのは
君に会えないことをわかっているから
名前を呼べずにいるのは呼んでも君はそこにいないから
呼んでも君はいないから
「雅治」
瞼を閉じればに会えた
会えなくなると知っていた。
それでも、会いたかった。
「好いとうよ・・・(。)」
言葉は、泡になって消えた。
さらってくれるなら、波。
届けて、この想いを。
俺にはできなくても海にならできるから
君はあの日おとぎ話の人魚のように
水の中
心を持ち去って
泡になって消えた、泡沫人。
end.