「・・・・サボりか?」



「・・・何しに来たのよ、ぺてん師」







屋上の手すりに体をあずけて




外を眺める




俺に振り向くことはしなかった。




















『忘れさせてよ』




















を探すなら屋上。



の学校で一番気に入っている場所がここだからだ。



屋上に通じるドアを開けると



授業中に1人たたずむその後ろ姿がすぐに目に入ってきた。






「また別れたんか」


「・・・・・元カレの仁王には関係ないと思うけど」


「ひどいのう。授業にでてないから心配で様子見に来てやったのに」


「心配してくれなくていいからほっといて」






(ほっとけないからここにいるんだが)





にとっての俺は元カレ。



俺にとってのは元カノ。



少し前まで付き合っていた2人だった。



別れた原因は俺の浮気。



・ ・・ってことになっているが、



本当は違う。





「またフラれた?」





近づく後姿はいまだに俺をその目に映すことはなかった。



が体を預けるてすり。



の隣まで行くと俺もまた手すりに寄りかかり



外を眺めた。





「・・・あたしは男を見る目がないみたい」


「くくっ・・・そうかもな」


「笑うところ?」





もちろん笑うところだ。



ふと横を見れば今度はの横顔。



だがが俺を見ることはない。



本当に笑える。



お前が好きになるのが俺みたいな男ばかりなら。



見る目がないとしか言いようもない。





「・・・仁王は彼女できた?」


「そんなものおらん」


「嘘つき」


「ホントじゃよ」


「・・・へぇ」





・・・なぁどこ見とる。



は手すりに体を預け



目を向けるのは外ばかり。







(・・・隣にいるのに)







誤解だった。



俺に付きまとってくる女子がいて



そいつが俺と付き合ってるようににわざと見せた。



誤解をとこうとしようとしたときには



もうの隣には



俺じゃない別の奴がいた。






「また他の男と付きうつもりなんか」


「・・・仁王ってそんなに人に干渉する人だっけ?」


「・・・さあ。(だからだ)」





いつになったら俺を見るのだろうか。



目線は外ばかり。



すぐ隣にいるのに。



・・・どうしようもない。



どうしようもないほどバカな俺。



が授業にいなくなるたびに



また誰かと付き合っては別れたのかと。



お前に会いに来る。






「なんではフラれるんかの」


「・・・・・」


はいい女じゃ」


「・・・仁王がそういうこと言う?」


「言う」






お前に会いにきては



また俺を見るようにの隣で外を眺める。






(・・・・本当に見る目がない)






お前が一度は付き合っていた男は



こんなにも未練がましい。



と別れてからも



しか想い続けることができないような



どうしようもない奴だ。






「・・・・・・・誰といても思い出してむかつく。」


「・・・?」


「いつもお前俺のこと見てないだろうってフラれる。」






の横顔。



何かを想うかのように目を閉じていた。






「本当に男見る目ないの。いい人って星の数ほどいると思うのに」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


「誰といても仁王のことばかり思い出してむかつく。」


・・・」


「・・・・・忘れたかったのに」







まだは俺を見ない。



目を閉じて外を見ることさえ拒む。



今からでも間に合うのか。



誤解だとそう言えば。



そしたらもう一度お前は俺を見るだろうか。





(・・・・・そんなに簡単じゃなか)





もうどれほど



と目を合わせていないだろう。



俺と別れてから



一緒にいなかった時間。



は他の奴といた時間が長かった。





「・・・


「・・・ねえ、仁王。自分ばかりが好きでいるのって辛いんだよ」


「・・・・・・・・・・・・」


「・・・仁王」





どこ見てる。



俺なら隣にいる。










































































































































































































「忘れさせてよ」














































































































































































































手すりから体を離し、俺のいるほうへ向く



の目が俺を映す。



久しぶりにあった目。



それは



確かな矛盾。






「・・・それを俺に頼むのは間違いじゃなか?」


「・・・他の誰も忘れさせてくれなかった。」





「むかつく。・・・なんであたしばっかり好きなの?」






なに同じこと、



考えてんだよ



自分ばかりが好きだとか。






(誤解ばかり)






好きな女が自分を好きだと言うのに



忘れさせる?



試しているのか



この俺を。



はうつむいた。



再び俺を見ていない





「俺がの前からいなくなればいい?」


「・・・嫌だ」


「俺がの隣に立たないようにすればいい?」


「嫌だ」


「俺が屋上に来なければいい?」


「嫌だ」


「俺がに話かけなければいい?」


「嫌だ」


「・・・わがまま」


「・・・・忘れさせてくれればそれでいいよ」





どうやって?



こんなに未練がましい男がどうやってお前に



俺を忘れさせることができる。





「・・・思い出さなければいいんじゃろ?」


「え?」


「誰といても俺を思い出さなければいいんじゃろ?」





がもう一度俺を目に映した。



が顔を上げた瞬間。



俺はの腕を引っ張って抱き寄せる。





「におっ・・・・」





隣にいる。



俺を、見てろ。






























































































































































































































「思い出す暇もないくらい想わせてやる」































































































































































































忘れたいなんて思うこともないくらい。



外なんて見ていられないくらい。





「・・・んっ・・・・」





反抗する間も与えずに



の唇を奪った。



お望みなら



忘れさせてやる。



ただし



忘れるなら、俺以外の全てだ。












「っ・・・ん・・・にお・・・・」



「好いとう、











誤解なら、いまさら解いてももう遅い。



それよりは



今、



この時間が止まることを願うほうが



ずっとを想っていることになるはずだ。










「・・・はぁ・・・っ・・・仁王!・・・・」


は男を見る目がないから仕方なか。」









唇を離したが俺を睨む。







こんなどうしようもないほど



お前を想ってばかりいる奴が



好きなんて言うから。





。もう一回。」


「え?・・・・んっ・・・・・に・・お・・・・」





お望みなら



忘れさせてやる。



ただし



忘れるなら、俺以外の全てだ。




































































































































思い出す暇もないくらい、想わせてやる
































































End.