夢ならば、醒めないで。
























『夢見』

























「ジローちゃん、ジローちゃん」


「ん・・・ー?」


「次ジローちゃんが当たる番だよ」






数学の授業



俺のクラスを受けもつ教科担任は



その日と同じ名簿番号の人から当てて



その人から番号順に質問をして授業を進める。



クラスで一番遅い名簿番号までくると必然的に名簿番号1番の俺が当てられるんだ。





「芥川、従ってyは?」


「んー?・・・・・・・・14」


「お前いつも寝ているわりによくわかるな」


「だって俺頭いいCー」


「よーし、次の問題なぁ」






教師に冗談が流されても平気(半分本気だけど)



同じクラス、俺の隣の席にはがいるから。





「ジローちゃんいつ当てられても答えあってるよね。すごい!」


「へへっが起こしてくれるおかげー」


「ジローちゃんを起こすのはあたしのお仕事なんだよ」






笑って



いつも通りに隣の席に座って



俺を起こしてくれる



隣を見ればがいて



笑って



俺は



それだけでもうれしくて、



うれしくて自然と顔がにやける。





























・・・・でもね、



時々、何が現実で何が夢かわからなくなるんだ。



時々、怖くなる



時々、無性に



怖くなる。















































































































































昼休み



俺はを探して図書館に来ていた。



にはで友達がいるし



俺も跡部達と昼を食べることが多い



と一緒にお弁当を食べる時もあるけれど



今日は前者。







ドアノブを回して引いて入る図書館



中はとても静か。



俺はを見つけた。






(・・・寝てる)






本好きの



が見つからない時は図書館を探せばいいてくらい。






・・・?」


「ん・・・」





机にうつぶせて眠るの下には



細かい字で書かれた厚めの本が開かれていた。













(・・・起こすのもったいないかもね)











眠るはかわいかった。



こんな子に俺は起こしてもらってるんだなぁって



俺は



それだけでもうれしくて、



うれしくて自然と顔がにやける。



の仕事が俺を起こすことなら



俺の仕事は図書館で本に夢中になるを授業に間に合うように呼びに行くことだった。





「(・・・もったいないけど)・・・、起きて?」





ゆっくりと



俺はの瞼が開かれるのを待った。







「・・・ジローちゃんの・・・声?」


「うん。俺だよ。」


「・・・・あれ?あたし・・・」


、昼休み終わるよ?」








ガタっと勢いよく図書館のいすを立った



ありがとうってあわてて手元の本を閉じて



本を元あった場所に戻した。
















「今度はあたしが起こされちゃったね」














恥ずかしそうに照れて笑って。



そんながかわいくて、かわいくて。



キスがしたくなった。
















「え・・・」






























































夢ならば、醒めないで。


































































場所が図書館だったから触れるだけの



短いキスしかできなかったけど



照れて笑うがかわいくて、かわいくて。



今度は抱き締めたくなった。







「・・・行こう。授業始まるよ?」


「うん!」






場所が図書館だったから他の人の目もあるし



ぐっと我慢。と手を繋いだ。










・・・時々ね、思うんだ。










君のいるこの世界のすべてが夢だったらどうしようって。



そしたら俺はずっと眠り続けて



夢を見続けることを選ぶんだろうけど





(起きたくないな)





「ジローちゃん、次は古典だっけ?」


「・・・また当てられても起こしてね、


「うん!」
































もし、もしもね



君の寝顔もさっきのキスも



この手の温もりも



すべてが夢だとしたら。



・・・が、夢だとしたら、







































(どうか、醒めないで。)





















































「ジローちゃん?そっち教室じゃないよ?」


「・・・。俺眠くなっちゃったから、屋上に行こう?」


「・・・ジローちゃん?」





いつもなら隣を見て君に言って



それに君が笑って答えてくれる。



でも、俺はを見ようとしなかった。






!膝枕ー!」


「え?うん。・・・いいけど」






の手を引き、たどり着いた屋上で



俺はいつも通りに振る舞っているつもりで、の膝枕にお世話になる。



仰向けになるとの顔の後ろに空が映った。





「ジローちゃん、いつ起こせばいい?放課後まで?」


「・・・・・(夢だったら・・・)」


「ジローちゃん?」


「・・・次に俺の目が覚めて」


「え?」














































































「次に俺の目が覚めてがいなかったらどうしよう?」



































































































夢ならば、醒めないで。



君のいるこの世界のすべてが夢だったら。





「ジローちゃん・・・」


「もう一度眠れば会えるのかなぁ?」





これは夢?



これは現実?



君は夢?



君は現実?







夢なら、どうか醒めないで。







「・・・・・・・・・・・・ジローちゃん、いつ起こせばいい?放課後まで?」


「・・・・


「ジローちゃんを起こすのはあたしのお仕事だもん。」







何が現実で



何が夢か



わからなくなる。



怖くて。



無性に怖くて。
























「ジローちゃんを起こすためにあたしはちゃんとここにいなくちゃ!」

























どうか醒めないで、醒めないで。





















「・・・・・放課後まで」


「それまで寝るの?ジローちゃん」


「うん。・・・いい?。」


「いいよ」






笑って。



いつも通りに隣の席に座って。



俺を起こしてくれる。



隣を見ればがいて。



笑って。



俺は



それだけでもうれしくて。
























「おやすみ、ジローちゃん。」


「・・・おやすみ、。」


























夢ならば、醒めないで。



寝ても醒めても君がいて。



君のいる世界の全てが夢ならば、









君が夢だと言うのなら。














































































どうか、醒めないで。













































End.